『 Vanilla 』
※原作沿い第二部月視点です。

何かにつけて抱きついてくる、小さくて柔らかい女の身体。
細い腕を僕の背に回し身体を擦り付ける。好きにさせているとまるでマーキングされているような気分になる。
「ミサ、これ何の匂い?」
今日はいつものシャンプーと混じって、何かやたらと甘ったるい匂いがしている。
「今度CMする香水なんだけど、物凄くバニラだよねえ」
ミサはもう大人なのにね、と笑う顔はアイドルとして通用する可愛らしさを維持しながらも確かに大人びた表情を見せ、そう言われてみると出会ってから結構経つことに気づく。
甘いあまい匂いのなかで目を瞑ると何か忘れていることを思い出せそうな気持ちになって、僕はミサの肩を抱き匂いのする箇所を探るように首筋に顔を寄せた。

『そんなに甘いものばかり食べていると、身体からも甘い匂いがしそうだな』

身体に甘い匂いを纏って罠を張るあの男は嘘吐きだと知っていたから、僕はその手を掴まなかった。お互い囚われたら最期と分かっていた。
どうせ蜘蛛のように念入りに巣を張り蓄え、僕を閉じこめる迷宮を組み上げていたんだろう?
僕がキラじゃなかったらなんて夜神月であることと同じくらい揺るぎない譲ることのできない事実を世界の名探偵だった男の名誉のために妥協してやるとしたら、僕はきっとおまえの傍らにいることを選んだろう。
誰よりも危険で魅力的で興味深い、L。
愛おしくて僕が性の概念もかなぐり捨てようと思ったほどの男。
今でも愛しているよ。
こんなに小さくなくて僕と同じくらいの背丈で僕よりも肉がないのに力強い手足を持ったあの身体を抱き締めたい。
鴉の濡羽のような黒い髪と眼で、雪花石膏のような白く冷たい肌で、よく動く長い指で僕を惑わして捕らえて閉じ込めて何も考えられないほどおまえで満たしてくれ。
「…ライト、嬉しいけど、ちょっと苦しいよお」
ギブアップするように僕の背中を叩く小さな手に、折れそうに華奢な細い腰に、僕は現実を突きつけられ絶望する。

終わり

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月ミサですvv個人的にとても嬉しい絡みを・・・・ありがとうございます^^v
Lを求めて違う誰かに絶望する、これってまさに二部の月君じゃないかと思います!!
素敵な作品をお二つもありがとうございます〜〜〜



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