はなよめ 2













「どうしても、行かなきゃいけないのか・・・?」


「決まり事ですから。家に女児が生まれたらそれをもらうと。」


「・・・」


「メロ、泣かないでください。」

メロと呼ばれた少年は直接竜崎とは血の繋がらない兄弟だ。

身寄りが無く、養護施設にいたところを竜崎の家に迎えられた養子だった。

「エルは親代わりだ・・・ずっと俺の面倒見てくれた。」

自分より頭一つ背が高いメロ。勝気な性格だがいつも竜崎の後ろをついて回った。


「私たちがこうやって生活できるのは、向こうの家のお陰なんです。その家が嫁を欲しいといってるんです。」

「でも・・・」

「私は大丈夫です。」

「・・・・」

「父と母を頼みますよ」

「・・・ああ」

「兄もたまには帰って来てくれるでしょう。だから心配いりません」

「・・・俺が女だったら、よかった・・」

別れを惜しむようにメロは抱きしめた。

大好きなエル だれよりも幸せになってほしいのに・・・・







竜崎が嫁ぐ前日の出来事だった。














+++













海辺の高台に集落の墓地がある。海からの風がビュービュー吹き人影はない。

そこに一人やってきた者がいた。手には菊の花、喪服に身を包んだ年若い女性だ。


竜崎は一人墓参りにやってきた。あの家に嫁いできてはじめてのお盆だった。



一際大きな墓石が立っている墓の前で竜崎は立ち止まった。
持ってきた菊花をそなえ、線香に火をつける。そっと手を合わせ瞑目した。


波の音が遠くから聞こえる。

故郷はこの海の向こうだ。


みんな元気でやっているだろうか・・・・

自分は大丈夫、と言って出てきたのだ。しかし今の生活はけして自分にとって好ましい物ではない。

夫は毎晩のように暴力を振う。

腕や足、見えないところにはいくつもの痣が存在した。酷い時は顔を腫れるほど殴られる。でもあの家の家族は全員見てみぬ振りをする。

誰一人夫に逆らう者はいないのだ。


ざり、と小石が軋む音が後方から聞こえた。


もしかして夫が・・・?

恐る恐る振り返る。


しかしそこに居たのは夫ではなく、自分と同じ、菊の花を持った青年だった。






++++






「君は・・・兄の」

「はい。」

「花、同じでしたね。ここは花屋がほとんど無いから・・・」

失敗したな、と少々困ったように笑う彼は以前祝言の席で見かけたあの青年だった。


「いつ戻ってこられたんですか」

「今日、たった今。でも家には戻りません。大分久しぶりだし、それに・・・もう自分の家じゃないから」

「私に気兼ねをする必要はありません。それとも、夫に気兼ねしているのですか」

「・・・・」

すると青年の顔がみるみる翳った。

「母さんにあわせる顔が無い」

「お義母様はあなたのことを気にかけておられました。きっと夫もあなたの帰省を待っていると思います。」

「ありがとう。でもいいんです。僕はこのまま本土へ戻りますから・・・」

ふと、青年の目が竜崎の二の腕にとまった。いけない、と竜崎は咄嗟に袖からのぞく痣を隠した。

「それ、どうしたんです?もしかして」

「なんでもありません。昨夜階段から落ちたときに作ったんでしょう」

「だったら、どうして慌てて隠すんですか?」

「・・・」

「兄さんが・・・?」

きゅっと唇を結び、竜崎は俯いた。

「わたしが、いけないんです・・・・は、早く跡継ぎを生まなければいけないのに、なかなか授からなくて」

震える声でようやく言葉を返す。

「子供の産めない嫁は、役に立たない上に夫にも恥をかかせてまいますから・・・」

「そんな・・・」

「家に帰りましょう。私が案内すれば、あなたも帰りやすいですよね?」


顔を背けるように踵をかえし、先を急ぐように歩き出す竜崎の腕を青年は強く引いた。

驚いて振り返ると今にも泣き出しそうな顔の青年が立っていた。

あの日、夫が「ライト」と呼んでいた青年。ずっと心のどこかで存在が引っかかっていた。


「君が、あの家の犠牲になる必要はない。すぐ兄と離婚して、故郷にお帰りなさい。」

「私は自分で望んであの家に嫁いできました。」

「このままじゃ君が不幸になる」

「どうして?」

「・・・・僕が、そうだったから」


ウミネコが上空を羽ばたく。独特の鳴き声があたりを包んだ。

一段と潮の香りが強く感じた。


気がつくと竜崎は青年に抱きしめられていた。






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懲りもせずにまた駄文です^^;

そっす、うみねこっす(爆)

あの映画は切ない・・・・い※うみさ※もだけど、さと※こう※ちさんも体当たりな役だった。

あの監督と私のフェチどころは近いような気がする(笑)


お目汚しですみません・・・