※この話を初めて読む場合、妄想メモ帳か、関連作を先にご覧ください。
まぼろし(番外4)
彼に会ったのは、何ヶ月ぶりのことだろうか。
平素騒がしい場所からは縁遠い彼。まるで周りと調和する事を拒むかのような着流し姿。
嫌でも目に付いてしまった。
僕は思わずその場から逃げ出したくなる衝動をこらえ、竜崎に「久しぶり」と声をかけた。
大勢の人が行き来する大きな通り
時代は確実に移り変わっていく
目新しいものがいつの間にか風景に馴染んで昔からあるものが取り残されていく
彼は相変わらず大きな封筒を胸に抱えている。
竜崎はいつものように表情の読めない顔で僕を見つめ返すばかりで、僕だけが気まずい空気を吸っているようだ。
竜崎に接吻してしまったあの日から、彼に会いに行っていない。
でもどうしているのか・・・・気になっていた。
長い長い沈黙の後、竜崎はぽつりと言葉を漏らした。
「雰囲気変わりましたね」
「ああ、僕、学校を卒業したんだ」
「そうですか・・・。」
「竜崎はあんまり変わらないね」
「変化が乏しい生活ですので」
「また無理してるんだろ?」
「無理なんかしてませんよ。それよりあなた今、何してるんですか?」
「・・・・出版会社に勤めている。」
他愛無い会話で竜崎の心が解けたかのようにおもえた。しかし僕が出版会社に勤めていると言った瞬間、竜崎の表情が凍りついた。
「・・・・」
僕は焦った。出版会社にコネを持つことで影から竜崎の応援をしたかった。
それなのに肝心の彼があまりいい顔をしない。
「君の小説を書籍化したい」
「・・・無理ですよ。」
「どうして」
「無理なものは無理なんです」
彼は俯いたまま、僕をすり抜け通り過ぎた。
「竜崎!」
僕は彼の手を掴んで逃げる体を引き寄せた。
「・・・・っ」
振り返った彼はなぜか泣き出しそうな顔をしていた。
どきり、と心臓を掴まれるような錯覚を覚え僕は不謹慎にも目を奪われてしまった。
我に返ると、彼のやや固めの襟足が頬に当たっていた。
道には人が沢山いたはずだ
中には僕らを振り返る人もいる
しかし時が止まったかのように動き出せない。
彼が縋るように僕を抱きしめていた。
+++++++++
また下らないものを上げてしまいました;;;
離れている間に何があったんだりゅうざきぃいいい〜(笑)